OCT 概説
・光コヒーレンストモグラフィー
(optical coherence tomography:OCT)
背板組織に比較的吸収の少ない近赤外領域の微弱光を照射し,組織内部からの後方散乱光を干渉を利用することにより高感度に検出して断層画像を測定する方法である。一般には後方散乱光の大きさは,組織内部の屈折率変化に対応し,その遅延は散乱位置である深さに対応する。特徴は,空間分解能が数μmから数十μmであり,従来のX線CT(X-ray computed tomography),MRI(magnetic resonance imaging)や超音波パルスエコー法に対して,約一桁から二桁高いこと,X線などのように被曝の問題がなく,安全で無侵襲性であることが挙げられる。
・OCTの経緯
1990年頃に,最初のタイムドメインOCT(time domain OCT;TD OCT)が考案*され,その後2003年頃,高感度かと高速化を伴ったフーリエドメインOCT(Fourier domain OCT;FD OCT)が登場し,現在では,後者が主流となっている。技術的には,光通信や光計測技術を中心としたフォトニクスがベースとなって,光源,干渉光学系,信号処理・画像処理系などに関する開発技術が従来のイメージング技術と融合しながら進展してきた。
* 丹野直弘,市村 勉,佐伯昭雄:光波反射像測定装置,日本特許第2010042号,1990
・OCTの分類
OCTでは,TD OCTとFD OCTに大別される。TD OCTは,当初開発された資料の三次元各店を測定する点計測型OCTと,二次元光学系と二次元カメラを用いるフルフィールドOCT(full field OCT;FF OCT)に分けられる。点計測型OCTでは,主に試料の表面に平行な内部の平面(鉛直断面,en face)の断層画像が位相シフト法などを用いて測定される。一方,FD OCTは,低コヒーレンス光源と分光器が用いられるスペクトラムドメインOCT(spectrum domain;SD OCT)と波長走査光源と光検出器が用いられる波長走査型OCT(swept-source OCT;SS OCT)に分けられる。SD OCTでは干渉強度スペクトルをフーリエ変換(Fourier transform;FT)すると深さ強度プロファイルが得られる。SS OCTは干渉強度信号の時間列となるが,波長走査のために,時間軸は波長軸に対応するので,SD OCTとSS OCTの原理は基本的に同じである。しかし,SS OCTの光源はレーザー光であるので,空間コヒーレンスの高さから資料照射時もエネルギー密度が高く,SD OCTよりもSN比では有利と考えられる。最近では,FD OCTでも,二次元走査型や二次元カメラを用いるFF OCTが報告されている。